ハンドコイルガンの製作
ハンドコイルガン全体図ハンドコイルガン全体図

前作から3年以上が経過しましたが、遂に帰ってきました。今度は手持ち可能なサイズのコイルガン、「ハンドコイルガン」です。
今回のお題は「小型化」「威力向上」、そして「貫通」
当初の目標としては、「持ち歩けるサイズに収めて、前回に作ったコイルガンよりも威力を向上したい」とか、「せめてアルミ缶の片面は貫通して欲しいなー(*´Д`)ハァハァ」といった妄想(?)が実現できればいいかなー程度だったんですが、結果として期待以上の物が出来上がったので満足。

今回のコイルガンは、前回のような設置型ではなく、ハンドガンタイプにまとめてみました。やはり、「持ち運べる」というのが大きいし、それにやっぱり燃えるじゃないですか、漢のロマン的な意味合いで(何
また、各部を極力ユニット化し、基本的には半田を取ってネジを外すだけで交換できるような構造にしてみました。これによってメンテナンスも楽になり、将来的にコイルを大型化したり、コンデンサバンクを大型化したりといった改装が容易になっています。

>>コイルガンの動作原理
>>使用部品
>>回路図
>>各部解説
>>射撃結果
>>今後の改修案・発展案


コイルガンの動作原理

ここでは、コイルガンの動作原理について簡単におさらいしてみたいと思います。
コイルガンやレールガンといった代物は、「電磁飛翔体加速器」とか「EML(Electro Magnetic Luncher)」と一括りに呼ばれる事もありますが、構造は全く違います。
よくコイルガンとレールガンがごっちゃになってたり、どれもこれも「レールガン」とか呼んでるのを見かけますが、全くもって違います。構造が違うんだってば。


さて、まずはコイルガンの動作原理を理解する為に、小学生の頃に誰もがやったような電磁石の実験を思い浮かべてもらいたい。
エナメル線とかを巻いてコイルを作り、それに電気を流すとクリップとか釘がくっ付いた、というアレである。
まず、中心に鉄心とかの入っていない空洞なコイルを考えてもらいたい。まぁ当然、電気を流せば磁力が働き、鉄などの強磁性体は引き寄せられる。

このコイルの空洞部分の入り口に磁性体を置き、電気をずっと流すとどうなるか?当然、コイルに引き寄せられ・・・コイルの中ほどで静止する。電気を流しっぱなしだとコイルの中心、つまりは磁界の中心に向って力が働くので、コイルの中で静止してしまうのである。
このままでは弾はコイルに引きつけられるが、発射する事は出来ない。ではどうすればいいか?

答えは簡単、コイルの中心に磁性体が来た時にコイルに流す電気を切ってしまえばよい。そうすればコイルの中心に引き止められることなく、磁性体はコイルに引き寄せられる速度のままコイルをすっぽ抜け、飛んでいく。
これがコイルガンの基本的な原理。要は電磁石で弾を吸引して飛ばしている、ということ。


使用部品

今回も殆どのパーツが秋葉原で調達可能です。しかも大半の店舗が通信販売をしているので部品の調達に苦労するという事はあまり無いだろうと思います。
以下は使用した部品一覧。

部品名 個数 価格 販売店 パーツ使用部
NE555 1 100円(5個入り) 秋月電子 DC-DC昇圧回路
1KΩ抵抗 2 40円(1個20円) 千石電商
10KΩ可変抵抗 2 60円(1個30円) 千石電商
0.1μF マイラコンデンサ 1 20円 千石電商
2SC5200 トランジスタ 1 300円 千石電商
トランジスタ用ヒートシンク 1 40円 千石電商
31DF6 ファストリカバリー・ダイオード 1 120円 千石電商
100μH 5A チョークコイル 1 300円 ラジオデパート内の店
2回路6接点 トグルスイッチ(中点OFF) 1 200円 千石電商
耐圧250V 1000μF 電解コンデンサ 4 1260円(1個315円) 若松通商 コンデンサバンク
F10P40F 高速ダイオード 3 300円(1個100円) 鈴商 フライホイールダイオード
BTA41-600BRG 600V 40A 絶縁型トライアック 1 400円 秋月電子 射撃用回路
100Ω抵抗 1 20円 千石電商
プッシュスイッチ 1 80円 千石電商
36V ツェナーダイオード 7 140円(1個20円) 千石電商 電圧検出部
5V ツェナーダイオード 1 20円 千石電商
高輝度LED(青) 1 100円 秋月電子
47KΩ抵抗 1 20円 千石電商
2KΩ抵抗 1 20円 千石電商
φ10mm(内径8mm)アクリルパイプ 1 2〜300円 ホームセンターとか 加速用コイル
φ0.8mm 10m UEW(ポリウレタン銅線) 1 300円 千石電商
2mm厚 アクリル板 1 290円 千石電商 メインフレーム
プラスチックケース 適宜 1個80〜200円程度 千石電商
10mm アルミアングル 適宜 2〜300円程度 ホームセンターとか
単三×6本用 電池ボックス 1 100円 千石電商
10mmアルミ角材(中空) 1 部室に転がってた廃材 給弾ユニット
φ8 真鍮パイプ 1 部室に転がってた廃材
ネジ・スペーサー類 適宜 持ってたのを使用 ネジの西川 各部の固定に
ユニバーサル基盤 適宜 80〜200円程度 千石電商・秋月電子 各電子回路に

この他に、コンデンサバンク〜加速用コイルの間の配線に太い単芯線(IV線)を使用した事を付け加えておく。
ちなみに私は自宅に転がってたVVFケーブルを剥いて、その中に入っていたのを使用。ちなみにこれは、高校の時に第二種電気工事士試験の講習があり、その時に配られたのを「何かに使えるだろう」と取っておいた物という・・・
物持ちのいいことは救いだね。

まぁ、合計で大体4000〜5000円ぐらいで一通り揃えられると思います。とりあえず、1万円以内に納められたんでよしとしよう。流石に5桁行っちゃうと気軽に実験出来ないってモンですから。
まだ手が出しやすいぐらいの価格帯なんじゃないかな。


回路図



今回製作したハンドコイルガンの回路図です。動作を順に追っていってみよう。
まず、切り替え用1、切り替え用2というスイッチがある。これを1は右側へ、2はONにする。実際はここは、6接点・2回路内蔵型のトグルスイッチ1つで操作するから1回で切り替えられる。
すると、DC-DC昇圧回路に通電して高電圧が発生し、メインコンデンサに充電されていく。そして、一定電圧(252V)になった所でLEDが点灯するので、トグルスイッチを操作し、充電を終了する。
次に、トグルスイッチを反対側に操作して発射回路(切り替え用1を左側へ)に接続する。そして、トリガーのプッシュスイッチを押すとトライアックにトリガー電流が流れ、トライアックが導通し、プロジェクタイルが発射される。
射撃時に加速用コイルで高圧のサージが発生するが、これがメインコンデンサに流れると逆の極性で充電されてしまい、コンデンサを破損する恐れがある。よって、高速ダイオード(F10P40F)を余裕を持って3つ並列に使いフライホイールダイオードとし、逆充電されるのを防ぐ。

この回路図で特徴的なのは、切り替え用1・2となっているスイッチ部分である。
これはチャージ中にうっかりトリガーを押してしまい、誤射してしまうのを防ぐ為、また、射撃時のサージ対策として入れてある。
このスイッチが無い状態で、常に射撃回路と昇圧回路が接続された状態だと、射撃時に加速用コイルに生じたサージが昇圧回路の方まで流れ込んでしまい、ICが破壊される可能性がある。これを防ぐ為に、射撃時には昇圧回路と放電回路を切り離してしまう構造にした。
回路図を見ると、GND側は切り替え用2で切断し、+側はダイオード(31DF6)の存在によりサージが流れ込まない構造になっているのがわかる。



※追記
さて、上記の回路ですが、製作した頃まだ知識が浅かった事もあり不備が多々あります。
問題点に関しては何度か表の日記の方で触れていたりもしますが、記事の方をいい加減何とかしようという事で問題点及び対策を書いておきます。
今となっては昇圧チョッパよりもZVSの方が高効率でコイルガン向きかもしれませんが・・・

とりあえず修正版回路図はこちら。

主な修正点は以下の3点。
@:555の出力に電流制限抵抗が入っていない
3番pin〜FETのゲート端子までの間に100Ωを追加。

A:スイッチング素子の耐圧不足
2CS5200をそこそこの耐圧のFETへ交換
2SC5200の耐圧は230Vなので、メインコンデンサの耐圧250Vを下回ってます。そこで、余裕を持って耐圧300VぐらいのFETへ交換しましょう。
もしゲート容量が大きく、NE555の出力だけではスイッチング出来ない場合は2SC1815と2SC1015辺りの一般的なトランジスタを組み合わせてプッシュプル回路をFETのゲート前に入れてやると良いでしょう。

プッシュプル回路例


B:LED保護用ツェナーダイオードの書き忘れ
うん、単に書き忘れてただけなんだ。すまない。
LEDに5V以上がかかった際に導通し、LEDを保護する働きをします。


各部の解説

メインフレーム
フレームだけって写真も無かったんで全体図載せて誤魔化す(ぁ
基本部はアクリル板3枚と、グリップ部の固定用のパーツ、補強用のL字アルミアングルで構成されている。
グリップ本体、昇圧回路その他を格納する部分にはプラスチックケースを用いた。
今回、コレの製作のためにPカッターを買ったが、アレは良い。スパスパ切れる。というわけでアクリル工作する時にはかなりお勧め。2〜300円程度の出費でかなり労力が減る。

とりあえず、各部に使用したプラスチックケースのサイズを参考までに・・・
昇圧回路格納部:75×50×30
トライアック格納部:40×30×20
電圧検出回路格納部70×40×25
基盤とかをもっと小さく仕上げれば小型化も可能。

グリップ部は85×65(?)×40のケースを一度真ん中で切り、幅を切り詰めて85×55×40のサイズにして使っています。そのままだとかなりデカくて握りづらかったので。
後、グリップ部にプラスチックケースを使う場合、角をヤスリなどで適度に落としてやると握り心地が良くなります。というか、落とさないと痛い(笑)

DC-DC昇圧回路
DC-DC昇圧回路。6〜12V程度から250Vを作り出します。
回路図中だと、丁度この部分に当たる。
回路図中だとこの部分。
NE555とチョークコイルを使用した昇圧チョッパー方式のDC-DC昇圧回路である。
昇圧チョッパー方式というのは、コイルに流れる電流をトランジスタでスイッチングし、その際に発生するサージを利用して高電圧を得るという方式である。
トランスを使って昇圧するという方法もあるが、なかなか良い感じの巻き線比のトランスを入手するのは難しく、自作するのも大変である。
その点、昇圧チョッパー方式は入手しやすいチョークコイルを使っているので製作が楽かと思われる。
昇圧回路はケースに格納し、コイルガンの後部に配置されている。

回路切り替え用のトグルスイッチの配線は以下の通り。
トグルスイッチを端子側から。絶縁の為にホットボンドで固めてある。
配線はこんな感じ。
このトグルスイッチは、スイッチを上側に倒すと真ん中と下の端子、スイッチを下側に倒すと真ん中と上の端子が導通する。
2回路内蔵型なので、右と左でそれぞれ別の回路を制御できるようになっている。
今回は、スイッチを上側に倒すと左右の真ん中-下が繋がり昇圧回路に通電、下側に倒すとトリガーに通電するようにした。


コンデンサバンク
コンデンサバンク。一緒にフライホイールダイオードも配置してあります。 回路図中だとこの部分。
耐圧250V 1000μFの電解コンデンサを4つ並列に使用し、250V 4000μFとして使用している。
このコンデンサに蓄積できるエネルギーは125Jである。
感電すると余裕で感電死するほどのエネルギーを蓄積できる代物なので、充電後には端子部分に触れないように注意。


フライホイールダイオード
 回路図中だとこの部分。
コンデンサバンクのすぐ近くにフライホイールダイオードとして、高速ダイオードF10P40Fを3つ並列で配置。F10P40Fは1つのパッケージの中にパルス放電ならば80Aまで耐えられる高速ダイオードが2つ入っているので、合計でパルス480Aまで耐えられる事になる。
フライホイールダイオードは、射撃時に加速用コイルに発生したサージがメインコンデンサに流れ込み、逆の極性に充電されてコンデンサが破損するのを防ぐ役割がある。



射撃用回路
トライアック。パルス放電で最大400Aまで耐えられる代物です。 回路図中だとこの部分。
機械的なスイッチだと、通電時の損失が大きい上、エネルギーが大きい場合には接点部分が溶着したり、酷い場合はスイッチが耐え切れず爆発したりと危険である。
今回は、600V 40Aのトライアックを使用した。一応データシートを見ると、コイルガンの射撃時の様なパルス放電ならば最大で400Aまで耐えられようなので採用した。
トライアックとは、双方向サイリスタとも呼ばれるもので、少々名前が違うだけでサイリスタと制御方法は全く同じである。ゲート端子にトリガ電流(数10mA程度)をかけてやると、他の二つの端子が導通するというものである。


電圧検出部
電圧検出部。そのうち作り変えようと思ってます。 回路図中だとこの部分。
ツェナーダイオードを直列に繋ぎ合わせ、一定電圧以上になると通電し、LEDを点灯させるようにした。
手元にあったツェナーダイオードで製作したら、252Vとなって微妙にコンデンサの定格を超えてる気がしないでもないが・・・多分この位なら平気と信じて使ってる。
また、一定電圧以上になると通電、一定電圧まで下がると通電するのをやめるという動作をしているので、コンデンサの保護の役目も果たしていると言える。


加速用コイル&バレル
加速用コイル。結構小さい。 回路図中だとこの部分。
給弾機構を昇圧回路の格納されているケースの上部に配置したので、高さを合わせる為にスペーサーを使って底上げしてある。
バレル部分には200mmの長さに切った内径φ8mm、外径φ10mmのアクリルパイプを使用した。
加速用コイルは、φ0.8mmのUEW(ポリウレタン導線)を10m巻いてある。
コイルの銃口側には、磁力を稼げれば良いなと思い試験的にワッシャーを入れてある。


給弾機構
そのうちバネを仕込んでやろうと思ってます。パイプの真ん中に小さな磁石が入っている。
部室に転がっていた10mmの角材(中空)と外径8mmの真鍮パイプを使用して給弾機構を作った。
上部の穴から弾丸を装填し、脇に出ているレバーを押して発射するのに最適な位置に押し込む。
位置がずれたり、ちょっと傾けるだけで銃口からプロジェクタイルがポロっと落ちないように、真鍮パイプの内部に磁石を仕込んで、プロジェクタイルを保持出来るようにした。


●プロジェクタイル
プロジェクタイル(弾丸)。焼き入れ済み。
つまりは弾丸の事である。
写真のプロジェクタイルは、5寸釘を30mmにカットしたもので、先端をヤスリで削って尖らせ、更に焼き入れ加工した物である。
・・・まぁ、焼入れは試験的にやった物なのでこれ1個だけだけど。ちなみに焼入れは大学の電気炉を使ってやった。焼入れの実験をやる機会があって、その時に「ついでにコレも焼入れするのはダメですかね?」って出したら実験試料と一緒に加熱してくれた。ありがとう実験の担当だった院生の人(ぁ
自宅で焼入れを行う時はバーベキュー用の炭とか使ってやると良さそうな予感。浸炭(鋼の表面に炭素が浸入し、硬度が増す)も期待できる。
先の尖らせ方としては、カットしたのをボール盤のチャックにくわえさせ、回転している所に鉄工用ヤスリを斜めに押し当てて先端を削るという方法が一番楽みたい。まぁ、旋盤で気合と根性入れて作るのも良いですが。


射撃結果

まずは普通に射撃。
エアガン等ではありがちな射撃音が全く無いです。あるとすればトリガーに使っている押しボタンスイッチを押すときの「カスッ」っという殆ど気にならない小さな音ぐらいでしょうか。
ほぼ無音でいきなり弾丸が飛んでいきます。
弾速も結構速め。最初はもっと弾速は遅いと思い、軌跡も山なりになるかと予想していましたが、かなり真っ直ぐです。
作った本人ですら「電磁石でここまで加速出来るんだなぁ・・・」と感心するほどでした

次に、適当なアルミ缶を標的にし、前述のプロジェクタイルを使用して射撃してみた。
裏側まで貫通。向こう側が見えてます。
見事に貫通♪
着弾した瞬間、アルミ缶が派手に吹っ飛びました。
当初は「片面貫通かな〜?」とか思ってましたが見事に両面貫通しています。
反対側
反対側を見てみると、内部から突き破った事を示すように外側に捲れ上がっているのがわかります。
缶の底に射撃。ちなみに2射目。
缶を今度はそのまま横に置いて、底面を狙ってみました。
結構固めの部分なんで、余り期待はしていませんでしたが・・・それでも吹っ飛んだ缶を回収してみると弾が刺さってました。
弾の直径ほどの穴は空いているので、後一押しで弾が中に落ち込む感じ。もしかしたら缶を固定してやれば貫通してたかも。


今後の改修案・発展案など

●現状ではチャージに時間かかりすぎ
今のところ、単三乾電池×6を使用しているが、これだとチャージに非常に時間がかかる。具体的には1分オーバーとか。それにすぐ切れるのでコストパフォーマンスが悪い。
しかし、安定化電源や、PC用のATX電源から取ってくると30秒程度でチャージ出来るようだ。恐らく、必要な電流量が確保できていないのだと思う。
これらに関しては、電源をエネループ等の充電可能な物に変えるか、もういっその事RCカー用のニッカドバッテリーに換装するのが良いかと思われる。
また、9V角電池で使うようなスナップを電池ボックスとの接続に使っているのも問題の一つなんじゃないかと思っている。コードが細いから抵抗が大きいんじゃないかと。
とりあえず近いうちに、角電池用スナップを止めて、ラジコン用の2Pコネクタ辺りに変えようと持っています。丁度持ってるニッカドバッテリーも2Pコネクタが付いてるし。

他にも、家の中とかで撃つ場合はいちいち電源を持ってくるのも面倒なので、ACアダプタで有線駆動できるようにしようか、なんてのも。
秋葉原でジャンク品のノートPC用のACアダプタで、12V程度の出力のを探してくればそれで事足りるはず。


●もっと威力を上げたい
まずは、コイルの大型化が挙げられる。
単純にコイルを大きくすれば、その分磁力も強くなり、威力が増す。
しかし、あまり巻きすぎても引き戻す力が強くなってしまい威力減となる可能性が有るので、単に巻きまくれば良いというものでもない。
また、コイルの直流抵抗の事も考えなければならない。あまり直流抵抗が大きいと、数回射撃しただけでコイルが熱々になる場合も有る。
他にも、コイルの周りを鉄板で覆ってやり、磁力を稼ぐ方法もある。

次に、コンデンサの大型化・高耐圧化が挙げられる。
コンデンサをもっと並列に繋いで容量を増やせば、投入エネルギーは大きくなる。しかし、容量が大きすぎるとコイルへの通電時間が長くなり、結果としてプロジェクタイルを引き戻してしまう事になる場合がある。
又は、コンデンサの耐圧を高いものにして、もっと高い電圧を使用するという方法もある。コンデンサに蓄えられるエネルギーは

   E=(C×V^2)/2    (C:コンデンサの静電容量、V:電圧)

の式の通り、容量を上げるよりも電圧を上げた方が手っ取り早くエネルギーを大きくする事が出来る。
しかし、電圧を上げすぎると今度はトライアックの定格をオーバーしてしまう可能性が出てくるので、トライアックを並列に複数個使う等の対策が必要になってくる。

また、発展型として複数のコイルを使用して加速させる多段式という案もある。
コイルガンのエネルギー変換効率は非常に悪く、単コイル式の場合、頑張っても入力エネルギーの数%程度しか運動エネルギーに変換することが出来ない。しかし、複数の加速用コイルを使用して順々にプロジェクタイルを加速してやると、多少はエネルギーの変換効率が改善される。しかもこの場合は、一つ一つのコイルは非力でもいいのでサイリスタ等に高スペックを求める必要がなくなるというオマケ付きである。
それぞれのコイルの制御法としては、タイミングICを使って一定間隔でコイルを順々にONにしていく方法や、コイルとコイルの間にレーザー発振部・受光部を1つのセットとした物を設置し、「プロジェクタイルが通過して受光部を遮った時にコイルに通電する」というような回路を組んでやる方法が考えられる。
前者はタイミングの調整が面倒で、プロジェクタイルの種類が変わったりして速度が変わってしまうと上手く加速出来ない場合がある、と言う問題点があり、後者はどんな速度でも柔軟に対応できるが光学系の調整が大変&コストがかかる、というような問題点がある。


戻る