イオンレイガンの製作
イオンレイガンとは、離れた対象を帯電させる事の出来る、いわば「ワイヤレススタンガン」とも言えるモノである。
写真を見ると判ると思うが、ガンと名が付くだけあって一応形は銃のような形状にまとめられている。が、先端部には銃口など無く、端子が飛び出ている。
この端子部分から高電圧のイオンを飛ばし、対象を帯電させるのである。
海外などではキットとして販売されていたりするが、今回はこれを自作してみようと思う。
なるべく入手しやすい部品を選んだので、部品集めには苦労しないはず。恐らく、秋葉原で全て揃える事が出来るだろう。
>>必要部品一覧へ
>>各部の簡単な説明へ
>>製作記事へ
>>実験結果へ
■必要部品一覧
部品名 | 個数 | 価格 | 入手できる場所 |
冷陰極管駆動用インバータ | 1 | 700円 | 秋月電子 |
電池ボックス(単3×4) | 1 | 90円 | 千石電商、秋月電子 |
1MΩ高圧抵抗 | 1 | 100円 | 山王電子(ラジオデパート2F) |
押しボタンスイッチ(モーメンタリ) | 1 | 80円 | 千石電商 |
ユニバーサル基盤 | 1 | 200円 | 千石電商 |
1KV耐圧ダイオード「1N4007」 | 20 | 300円(10本入りで150円) | 千石電商 |
3KV耐圧 3300pF セラミックコンデンサ | 20 | 1680円(1個84円) | 斉藤電気商会(ラジオデパート3F) |
プラスチックケース | 適宜 | 100〜300円程度 | 千石電商 |
アクリル板 | 1 | 290円 | ラジオデパートB1Fとか。ホームセンターとかでも置いているはず。 ちなみに私は千石電商で購入した。 |
各パーツの一覧と必要個数、価格、入手できる場所をまとめてみた。
全て秋葉原で調達が可能である。
合計3000〜4000円程度で必要な部品が全て揃えられる。
ちなみにこの構成は基本的な構成である。私は途中で追加部分を思いつき、電池ボックス(単3×4)と、トグルスイッチ、電池ボックスのスナップ部分を追加した。これに関しては後で述べる。
■各部の簡単な説明
●発振部
発振回路として今回採用したのは「冷陰極管インバータ」という物である。
これは、液晶ディスプレイのバックライトとして利用されている冷陰極管を点灯するために使う物で、5〜12V程度からトランスを使用して交流1000Vを作り出している。
秋月電子などで簡単に入手できる。値段は1個700円ぐらいだ。
●昇圧部
イオンレイガンの要となるのは、この10段構成のウォルトン・コッククロフト回路である。
このウォルトン回路は、ダイオードとコンデンサから成るもので、交流を簡単に昇圧する事が出来る。使い捨てカメラでスタンガンの時も使用した回路である。
今回はコンデンサ、ダイオードを20個づつ使用し、10段の物を製作した。つまり、入力電圧の10倍の電圧が出力される事になる。
発振回路として採用した冷陰極管インバータは1000V程度の電圧を出力するので、このウォルトン回路を通すと最終的な出力電圧は10KV程度になる。感電には十分注意してもらいたい。
なお、ウォルトン回路は「各段のダイオードは電源の2倍の電圧に耐えれば良い」との事なので今回はダイオードの耐圧は1KVの物、コンデンサの方は3KVの物を使用した。
・・・いや、一番安かったのが丁度コレだったもんで(汗
特にダイオードの方、「1N4007」は耐圧1KVの汎用品なので、本当に安く手に入る。千石電商で10本入りで150円と言う低価格っぷりである。
高圧ダイオードの方は駅前やラジオデパート内の店で手に入る。
大体1個100円前後なのだが、私はラジオデパートの3階にある斉藤電気商会で1個84円で売ってるのを発見し、そこで20個購入した。
ネットで探してみたら他にも同価格帯で売ってる店を発見。こちらは駅前のラジオセンターにあるようだ。
※追記:秋月電子で1N4007が20本入りで100円のようです。
●バッテリー周り
今回は自宅に丁度あったABSのボックスを使おうと思っていたのだが、ギリギリで電池ボックスが入らなかった為に削ったり色々やったせいでかなりゴテゴテしている。今度作り直すかも・・・
実際にこれから作る場合は、素直に電池ボックスが入るサイズのケースを調達してきた方が良い。
ちなみに、これらのボックスは千石電商で様々なサイズが購入できるので、各自好きなように工夫して作ってもらいたい。
■製作
まず、回路図を示す。適当な図で申し訳ない。
上部の大量のコンデンサとダイオードが組み合わさった部分、これが昇圧部でも述べたウォルトン・コッククロフト回路である。そして、高圧側の先端には1MΩの抵抗が付いている。
その下に書いてあるのが発振部にあたる冷陰極管インバータである。そして、スイッチ、バッテリーがある。
気付いただろうか、回路の中に「グリップ部金属パーツ」というのが入っている。
実は、イオンレイガンの使用時にはこの金属パーツを使用者が握ることになる。つまり、イオンレイガンが使用者自身をアースしてしまおうという事である。
こうして、イオンレイガンと自身の電位差を0にしておくことで、効率よく回路を動作させ、イオンが対象に向って飛びやすくする。
これだけで見ていると、なんか感電しそうで気持ち悪そうだが、実際は逆である。試験駆動の際にうっかり触っていない状態でいたら少しバチバチ来た(笑)
さて、早速製作に入ろう。
@昇圧部分(ウォルトン・コッククロフト回路)を作る
一番部品数が多い所から作ってしまうことにする。コンデンサ、ダイオードの計40個のパーツを配置していく訳だが、ダイオードの極性の間違いには注意してもらいたい。
このような感じで基板上に組んでいく。今回はこの昇圧回路の部分を銃身として使う為、細長く並べてみた。
半田付けする際に注意が一つ。
尖った部分があると、そこからイオンが漏れやすくなるので、なるべく表面が滑らかになるように半田付けを行う。私は、部品を基盤に差し込んだ後に曲げて、かなり短く切った後に半田付けを行った。
こうすれば尖った部分が出なくなる。
A高圧側の抵抗の加工
今回は、高圧側に付ける抵抗の足をそのまま端子にしてしまおうと考えた。その為に少々抵抗の足を加工する。
少々見づらい&抵抗が実際に使用したものとは別物だが・・・写真のように抵抗の足を紙やすりで削って尖らせてある。先ほども述べたように、尖っていたほうがイオンが飛びやすい。
余談だがこの抵抗、高圧抵抗が使えなかった時はこれで代用しようとしてた10KΩ抵抗です。抵抗値が小さすぎるんで、回路にかなりダメージが来そうですが・・・とりあえずこの抵抗を使って動作確認した時もちゃんと動いていた事を付け加えておく。
この抵抗を、先ほど作ったウォルトン・コッククロフト回路の高圧側に半田付けする。この時も、半田付けした面は滑らかになるように注意する。
高圧側の抵抗を半田付けした後、コッククロフト回路の低圧側にリード線を半田付け(この部分も出来るだけ滑らかになるようにした)してやれば、主要回路部は完成である。
Bグリップ部の製作
今回、実際に作ったボディ部分、グリップ部などは一例である。ここら辺は、各自で自由に工夫して作るのがいいだろう。
別の方法で作るのもいいし、むしろ「外装なんて面倒だ!俺は別に感電してもいいぜ!」とか、「むき出しの基盤とかの方がハァハァできるからそっちの方が好きだ!」とか、「別に動作確認だけできれば良いやー」という人は作らないのも手だ(ぉ
今回、グリップ部は千石電商で購入したプラスチックケースを用いる事にした。
内部に単三乾電池×4の電池ケース、トリガー代わりの押しボタンスイッチ、電源電圧切り替え用のトグルスイッチ(後述)、使用者と回路をアースする為の金属グリップを組み込んだ。
一応、各端子部分がショートしないようにホットボンドで絶縁してある。
C銃身部の作成
ウォルトン・コッククロフト回路の半田付け部分で自分が感電しないように、アクリル板で保護用兼銃身部補強用のパーツを自作した。
試験駆動の際に、半田付け部分がプラスチック等に接触しているだけでも「シューッ」っと放電するような音がしていた事があった。そこで一応半田付け部分が宙に浮くように配置してある。
更に、この隙間にゴムシートまで入れて絶縁してある。
D配線・組み立て
これまでの工程で作った部品を組み上げていく。
今回は、ボディ部分などは千石で売っているプラスチックケースを組み合わせて仕上げようと思ったが、丁度良いサイズが無かった。そこで、少し大きめのサイズのケースを購入し、真ん中でぶった切った後に5mmづつ左右のパーツを切り詰め、再度組み合わせて丁度良いサイズにするという力技で解決した。
Eちょっと追加要素
今回製作したイオンレイガンでは、6〜12V駆動の冷陰極管インバータを6Vで駆動している。
まだ、インバータの方で電圧に余裕があるわけだ。
というわけで、無駄に定格ギリギリで駆動させるべく6V分の追加バッテリーを接続できるように電池ボックスの端子と、6V⇔12Vの切り替えを行う為のスイッチを付けた。
■実験結果
100均で安い電卓を買ってきて、この電卓に向ってイオンレイガンを使用するとどうなるかを実験してみた。
確認された症状は
・液晶部に向けると、普通黒くならない部分まで黒くなる ・適当な数字を入力し、イオンレイガンを向けると数字がリセットされたり、勝手に別の数字が入力されたりする ・上記の現象を起こすには、5〜10cm程度まで近づけなければならない |
という結果になった。
また、部屋の蛍光灯を消し、イオンレイガンを向けるとかすかに発光するのを確認できた。ちなみに、この場合は1mぐらいまで離れていても平気なようだ。
やはり、電圧が10KV程度しか出ていないせいか、電卓を完全に破壊する事は出来なかった。
しかし、比較的単純な構造の100均電卓でも上記のような症状が出たので、更に精密な機器(例えば、携帯電話とか、mp3プレイヤーといったもの)ならば、致命的なダメージを与える事が出来るかもしれない。
海外で販売されているキットの性能を見てみると、安いモデルでも30KV程度は出ているようだ。その程度の性能を実現しようとすると、ウォルトン・コッククロフト回路の段数を増やして長〜くするか、いっそのことバッテリー駆動を諦めて、CRTの内部などにあるフライバックトランスを発振させたほうが良さそうだ。